こんにちは。
今日は、辞書なしで超速読月刊英語ニュースの1つの特徴を翻訳者から説明させていただきます。
それは、原文を付けていることです。
原文を付けるといくことがなぜ特徴と言えるのか、以下の例文で説明します。
例文1.2月号収録の記事から
Japan and the United States have condemned Islamic State extremists for the apparent beheading of a Japanese journalist, hours after a grisly Internet video showed the execution.
Japan and the United States have condemned Islamic State extremists 日本とアメリカはISISを非難した for the apparent beheading of a Japanese journalist, 日本人ジャーナリストが処刑されたと見られる事実についてついて hours after a grisly Internet video showed the execution. 処刑を映し出した残虐なインターネットビデオの公開の数時間後に
この記事で注目していただきたいところは、
beheading of a Japanese journalist の
"beheading" の単語です。
"behead" 首を切る、首をはねる、頭部を切り落とす という従来の意味があります。
しかし、私はあえて残虐なイメージを与えない「処刑する」という訳を選びました。多くの人が目にするのでこれが事実に反しない適切な言葉と判断しました。
多くの人が読んだり、遺族や関係者の心情を察すると、「日本人の人質が首をはねられた」とはどうしても書くことができませんでした。
原文がない場合は、「処刑する」と読めば、ああ殺害されたか・・と分かりますが
本当の意味である「首をはねる」という意味は読者には通じません。翻訳者が「処刑された」と訳せば、「そうなのか」という伝言で終わりです。
しかし、"behead", "beheading" という単語を目にすれば、「ああ、首を切られたんだ・・」という残虐性を表す意味が分かり、「首をはなるなんてなんてやつらだ・・」などのコメントが頭の中に浮かぶかもしれません。
"behead"という単語が読者様に相当の衝撃や怒りを与えることになると思います。
ある意味では、単語の意味が読者様の判断に委ねられることにもなり、読むことの興味が一層増すことになると思っております。
首を切られているのに、処刑されたと言う訳ではインパクがないと思われる読者様も
いらっしゃると思います。翻訳者の私もそう思うことがあります。
だからこそ、原文を絶対つけなくてはならないと思っています。
原文があるということは、その記事のライターの心情や背景まで捉えることもできるのです。単におまけで付いているということでは絶対にありません。
すべての記事で、いちいち原文の単語と比較する必要もありませんが、このような
読み方を本書の1つの特徴にしました。
ついでに、先ほど翻訳が終了し、3月号に収録する記事の一部を例文に挙げます。
例文2.3月号掲載予定記事より
The most prominent touring circus in the U.S. said Thursday that by 2018 it will end its century-old display of Asian elephants, bowing to growing public concern about how the giant animals are treated.
The most prominent touring circus in the U.S. said Thursday アメリカで最も有名な巡業サーカスが5日に話している that by 2018 2018年までに it will end its century-old display of Asian elephants, 1世紀にわたるアジア象の出し物を終えると bowing to growing public concern 社会的な関心が高まっていることを考慮して about how the giant animals are treated. 大型の動物がどのように扱われているかについての
ここでは、"bowing to" に注目して下さい。
私の翻訳では、「・・を考慮して」と訳しています。
"bow to" は、降参する、・・に屈するという意味です。
直訳すると
「高まる社会的な不安に屈して・・ 」
この直訳では、大勢の人々を対象とする記事としては適切ではないと思われます。たとえば、テロ攻撃の社会的不安なら、むしろこちらの訳が適切ですが、サーカスの人気者の
象さんに対して社会的な不安は適切ではありません。
従って会社側にも、批判する側にも配慮する翻訳をしました。
本書では、
「社会的な関心が高まっていることを考慮して」
と訳しています。
こうすれば、批判する側は、無理矢理象のショーを中止させて子どもたちから叱られる
こともありませんし、サーカス側も、考慮したということで悪者にならずに済みます。
そこで、原文を見ると "bow to" で「圧力に屈した」となります。
さて、読者様はどのように捉えられますか? ということになります。
本書では、読者様が翻訳に参加することができるのです。
本書は、学校英語的な英文和訳で「ハイ、おしまい。次!」と、読者様が
全く参加できない世界ではないのです。
言わば、読者様参加型と思っています。
上記の2つの例文ではいずれも記事の元々の意味とは何のずれもありません。
原文が付いていて最も面白いところは、この記事を執筆したジャーナリストや通信社の
気持ちが分かるという所です。
例文1では、
処刑する(execute)でもなく、kill(殺害する)でもなく、beheadを使っているところに
執筆者のテロリストに対する怒りの心情が表現されていると思われませんか?
記事を書く人たちも人間です。記事によっては冷静になれないかもしれません。
記事を訳す私も人間です。記事によっては心を動かされることもあります。
現在発売中の2月のWorld Affaris の記事で
"militant" をテロリストと訳しています。本来は過激派、戦闘員という意味ですが、
残虐に人を殺すので、怒りをこめてテロリストと訳しています。すべてがそうでは
ありませんが。
原文を付ける意味は、速読のトレーニングの他に上記のような意味があります。
読者様は、読者様自身で最終的に決定する権利をお持ちです。これが他には
ない本書の面白い所です。
いわば、読者さまに「楽しく考えるスペース」をご提供しているといいうことです。
お手持ちの辞書とか、グーグル等の検索で、例えば、"behead" ,"bow"とか入力されて
意味を詳しく調べるのも面白い事です。必ずと言って良いほど、「新しい発見」が
あります。
いつもでは大変でできませんが、時折、英語の単語と本書の訳を比較することも
英語を読む楽しさを倍加する方法だと思います。
ちょっとまとまりませんでしたが、最後までお読みいただきまして心から感謝いたします。ありがとうございました。
本書を今後もご愛読くださいますようお願い申し上げます。
2月号発売中です。
http://goo.gl/tFd20i
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